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指定校推薦は他の推薦と何が違うの?合格するために必要なこととは?
更新日:2022/03/29 公開日:2022/03/08
2020年時点で、私立大学の推薦入学者は全体の半数以上という高い割合を占めています。これから進学を控え、推薦制度の利用を希望している人もいるのではないでしょうか。しかし、一言で推薦制度といってもいろいろです。どのような対策をしておいたらいいのか迷うこともあるかもしれません。この記事では、いくつかある推薦制度の中から「指定校推薦」に焦点をあてて解説していきます。
1.指定校推薦とはどのような入試制度?
指定校推薦とは、「学校推薦型選抜」の一種です。過去の進学実績に基づいて、大学側が指定校を認定します。指定校1校に対しての入学枠は1〜3名ということが多く、入学希望の優秀な生徒を高校側から選抜・推薦してもらいます。もちろん、指定校になっていれば誰でも推薦を受けられるわけではありません。生活態度や成績といった学内選抜の基準が設けられており、その基準をクリアしていることが条件です。希望者数が入学枠を超える場合には、課外活動や部活動の実績、出席日数なども選抜基準に加味されます。
指定校推薦は、高校側と大学側との信頼関係で成立している制度です。基本的には専願での出願であり、合格したときには必ずその大学に進学しなければなりません。しかし、それだけに高校、大学、そして受験生にとってもメリットが高い受験方法といえるでしょう。高校側は、それだけ有名大学への進学実績を作れますし、毎年優秀な学生を推薦できれば翌年以降の入学希望者を増やせるかもしれません。大学にとっては、定員割れのリスクヘッジになるうえに、早い段階で優秀な学生を確保できる点は大きなメリットです。
受験生にとっても、早い段階で進学校が決定するというメリットがあります。受験自体が早々に終了するので、大学進学準備や資格の勉強に時間を費やすことができます。ただし、推薦を受けているだけに、入学した後も母校の代表という意識を持つことは必要です。入学を辞退することはもちろん、中退することも難しいと考えたほうがいいでしょう。説明したように、指定校推薦は母校である高校側と大学側との信頼のうえで成立しています。信頼を損なう学生が出てくると、後輩の推薦枠が失われるなどの影響を及ぼします。
2.他の推薦入試との違いは?
では、指定校推薦は他の推薦入試とどのような違いがあるのか見ていきましょう。
2-1.公募推薦との違い
公募推薦も、指定校推薦と同じように学校推薦型選抜の一種です。公募推薦の場合、まず大学側が定めている条件に合致し、そのうえで高校側からの推薦をもらうことで出願できます。指定校推薦との大きな違いは、出願できる高校が制限されていないことです。指定校推薦は、まず通っている高校が大学側から指定校として認定を受けていなければなりません。ただし、公募推薦であっても1校あたりの推薦枠が決められている場合もあります。
その場合、出願希望者が推薦枠を超えるようなら、校内選考を通過することが出願の条件になります。公募推薦には「一般推薦」と「特別推薦」の2種類がある点も指定校推薦との違いです。「一般推薦」は、生活態度や成績を基準に選考を行うもので、原則として評定平均の基準が設けられています。一方、「特別推薦」とは部活動など課外授業の実績が重視されるのが特徴です。「特別推薦」の評定平均は、「一般推薦」より低めに設定されている傾向があります。
2-2.総合型選抜との違い
総合型選抜とは、2019年までは「AO入試」と呼ばれていた選抜方法のことです。総合型選抜は、大学側が求めている学生像に合致した学生を選ぶという特徴を持っています。一般的に高校時代の評定平均に捉われない大学が多く、どちらかといえば一芸に秀でている学生が有利です。学生の意欲や能力に重点を置いている傾向があり、人とは違う特技などを持っている学生が受験しやすいといえます。大学によって求める学生像は異なるため、これまでの傾向を調べておくのもいいかもしれません。
ただし、意欲や能力に重点を置いているといっても小論文などの提出を求められることが多いので心得ておいたほうがいいでしょう。また、大学によっては学科試験が必要な場合も出てくるので確認は必要です。これに対して、指定校推薦は高校時代の実績が評価の対象になります。総合型選抜の場合は面接が中心になるうえに、選抜方法についてもバリエーション豊かな点も大きな特徴です。また、総合型選抜は、指定校推薦に比べて受験期間が長いという違いもあります。
3.指定校推薦に向けたスケジュール
指定校推薦の細かい日程については、大学によって異なります。そのため、指定校推薦を希望する場合はできるだけ早めにスケジュールを確認したほうがいいでしょう。そうすることで、慌てることなく余裕をもって準備を進めていけます。すべてに必ず当てはまるわけではありませんが、一般的な指定校推薦のスケジュールは次のような流れです。
まず、6〜8月にそれぞれの高校で指定校推薦の希望者の募集が開始されます。募集が始まったら、担任教師に出願する意思があることを伝えておきましょう。その後は、10月頃までかけて校内選考が行われ、実際に大学に推薦される学生が決定します。10〜11月には大学に願書を提出し、11月頃に試験という流れが一般的です。そして、12月頃に試験の結果が発表されます。
4.指定校推薦の出願条件は?
指定校推薦の出願条件については、大学によって要求される評定平均が異なります。ただ、求められるのは優秀な学生であるということを忘れてはいけません。5段階評価で最低でも4以上必要になることが多いといえます。評定平均は、「全科目の内申点の総和÷科目数」で出されます。ただし、大学や学部によっては、平均点を満たしているうえに特定科目の評定平均が条件となっていることもあるので確認が必要です。
また、上位校になると、出願の条件として5でなければならないというケースもあります。高校1年生から3年生までの評定が計算の対象に入ってくることが多いことも、念頭に置くといいでしょう。指定校推薦での受験を意識する時期が遅くなると、1年生時の成績が足を引っ張ってしまうかもしれません。これは、出願する時点で1年生の時の成績が評定の4割強という高い割合を占めるためです。このように、指定校推薦で出願するには、大学が提示する評定平均の基準を満たしていることがもちろん求められます。さらに、学内選考になったときは他の志望者より高い基準である必要が出てきます。ただ、検定の取得などをしている場合は、他の志望者よりも有利になると考えていいでしょう。
5.指定校推薦だから大丈夫という落とし穴
指定校推薦はあらかじめ枠が決まっています。それだけに、出願さえすれば大丈夫と考えてしまう人もいるかもしれません。ここでは、指定校推薦で油断しやすい落とし穴について解説していきます。
5-1.指定校推薦の合格率は100%?
まず、指定校推薦での合格率は100%と思い込んではいけません。こうした思い込みは落とし穴になります。たしかに、指定校推薦は大学側が認定した指定校からの推薦で出願するわけですから、合格率が高いといえます。大学側は優秀な学生を早い段階で確保したいのに対し、高校側は有名大学への進学実績を作りたいという点でもお互いにメリットがある入試制度です。学生にとっても、早い段階で進路を決めることができるというメリットがあります。
しかし、だからといって合格率が100%とはいえません。合格できるかどうかは、学生がどのように対応するかで変わってきます。出願した学生が、高校から推薦を受けた通りの対応ができれば合格はできるでしょう。大学側にとっても、期待通りの優秀な学生であれば喜ばしいことです。ところが、指定校推薦を受けたことで慢心するなど、実力を発揮できない可能性はゼロとはいえません。その場合は思わしくない結果に終わることもあり、必ずしも合格できるとは限らないのです。
5-2.指定校推薦でも不合格はあり得る
前述した通り、指定校推薦とは高校側と大学側との信頼関係のうえで成立する入試制度です。大学が認定した高校から学生を受け入れる枠があるため、100%に近い合格率にはなります。しかし、高校から推薦を受けて出願すれば、それだけで合格が確約されているわけではありません。つまり、不合格になることもあり得るわけで、100%ではないということです。
不合格になるケースはさまざまな理由が想定されます。例えば、入試の当日に体調不良で本来の実力を発揮できないこともあるでしょう。もしくは何らかのアクシデントで遅刻や欠席するはめになり、受験ができなければ不合格になります。指定校推薦には小論文が設けられていることが多いですが、テーマが理解できずに対応できない場合もあります。または、面接で緊張してしまい、受け答えを失敗するかもしれません。
芸術系の大学や学部の場合でいえば、教授の主観で不合格になってしまうこともあり得るケースです。他にも、思わぬ理由で不合格になるケースも出てきます。例えば、学部全体では募集定員に収まっていたとしても、応募者が一部の学科に集中していて枠を超えてしまうケースなどです。その場合は不合格者が出ることになります。
5-3.指定校推薦で不合格になってしまったら?
指定校推薦は専願が基本です。他に気になる大学があったとしても、複数校受けることはできません。不合格になった場合を考えて他も受験しておく、ということはできないのは注意しておきたい点でしょう。もしも指定校推薦で不合格に終わってしまった場合でも、同じ大学を一般選抜で受け直すことは可能です。しかし、一般選抜に向けて対策をしてこなかった学生が、指定校推薦の不合格の後で切り替えてもまず間に合わないでしょう。
ただ、総合型選抜なら受験は可能といえます。総合型選抜は選抜期間が長いため、公募推薦の二次募集や合格発表の後でも可能性はあります。総合型選抜なら、高校からの推薦は要りません。総合型選抜は、入学希望者が自らの判断で出願できる公募推薦制度であるためです。それでも、総合型選抜に切り替えることがよい選択肢とはいえない部分もあります。大学に進学したいという思いだけでは、たとえ合格しても納得できる学生生活を送れないかもしれません。当初の志望校よりもレベルを下げたり希望しない学部や学科を選んだりするのは、よい判断とはいえないでしょう。そもそも、卒業後の進路も大きく変わってしまいます。万一指定校推薦で不合格になったときのことも想定し、一般選抜の対策もきちんと行っておくのが得策です。
6.指定校推薦の試験対策
では、指定校推薦でしっかり合格するにはどのようにしておけばいいのか、やっておきたい受験対策について解説していきます。
6-1.小論文対策
まず、対策を練っておきたいのが小論文です。小論文を作文と誤解する人も多いので、2つの違いを正しく理解しておきましょう。作文とは、自身の体験や感想を書いた文章のことです。その分、豊かな感性や巧みな表現力が問われます。一方、小論文はテーマや問いに対しての意見と論拠について筋道を立てて説明していく文章のことです。そのため、小論文には感性や表現力は必要ありません。説得力と論理性が問われる文章です。
小論文は、一定の型に従って書いていきます。はじめに結論を書き、その次に結論に至った根拠や理由など書きます。そして、最後の締め部分で再び結論を書いて完了させるのが一般的です。流れだけを頭に入れるよりも、まず実際に書いて練習しておきましょう。そのほうが書く力をつけるうえで重要です。通常、小論文のテーマとして選ばれるのは、受験先の大学や学部に関係したものが多いといえます。練習するなら、過去問などを参考に傾向を分析しておくことも必要です。
型に従って書くことは必須ですが、誤字や脱字にも十分注意しておけなければなりません。誤字脱字が多かったり文字数が不足していたりするのは論外です。原稿用紙を正しく使うことも必須ですし、オノマトペや短縮語も使わないよう注意したほうがいいでしょう。オノマトペとは、動きや状態を音で表現することです。例えば、「ぺたぺた歩く」や「さらさらな手触り」といった表現のことで、作文のような印象を与えます。
6-2.面接対策
面接対策では、まず自己分析をしておきましょう。自分の性格について客観的に分析しておくことが必要です。そして、大学への志望動機についても分析しておきます。動機が説明できないと、「どこでもよかったのだろうか」という印象をもたれかねません。その大学や学部を選んだのはなぜか、入学したら何をやりたいのかを説明できるようにしておくことが大切です。もちろん、大学で学んだことを将来どう活かしたいのかも忘れてはいけません。
大学を選んだ理由をもとに、入学後は何をしたいのかしっかりアピールしましょう。そのためには、自分についてきちんと掘り下げができているとアピールポイントが見えてきます。高校時代に頑張ってきたことは何かを伝えることも重要です。大学は、決して素晴らしい実績や記録を持っている学生ばかり希望しているわけではありません。それまでどのようなことに打ち込んできたのか、夢中になってきたものはあるのかを知りたいのです。面接対策としては、過去問の分析を行って大学が何を質問してくるか調べておくといいでしょう。そして、原稿を作成してロールプレイングしておくと当日慌てずに済みます。
執筆者:スクールIE コラム編集部
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